日本では、住宅を売却したり賃貸に出したりするとき、家具や家電、食器、調理器具などを片付け、空の状態にして引き渡すことが一般的です。
でも、まだ使えるものまで、すべて処分する必要があるのでしょうか。
家具だけでなく、食器や鍋、調理器具、寝具など、その家で使われてきた生活用品を必要とする次の人がいるなら、住宅と一緒に引き継ぐという選択肢があってもよいのではないか。
ホームリレープロジェクトは、そんな発想から始まりました。
海外の不動産情報を調べてみると、実際に家具だけでなく、家の中にある家財や生活用品を含めて売買されている住宅があります。
海外には「家具付き」だけではない住宅がある
海外の不動産情報では、「家具付き※1」「家具一式付き※2」といった表現をよく見かけます。
しかし、ホームリレープロジェクトが注目したのは、さらに一歩進んだ住宅です。
物件情報には、「家財を含む※3」「すべての家財を含む※4」「家具・家財を含む※5」などと記載され、家具だけでなく、住宅の中にある家財も含めて引き継がれる例があります。
※1 Furnished
※2 Fully Furnished
※3 Contents included
※4 All contents included
※5 Furnishings and contents included
以前からそこで使われていた家具や生活用品を残し、それらも含めて次の所有者へ引き継ぐ。
私たちが考えているHome Relayに近い住宅の姿が、そこにありました。
カナダ|「生活していた家」がそのまま次の人へ
カナダの不動産情報を見ていて印象的だったのは、家具が置かれているだけではなく、そこで人が暮らしていたことが分かるものまで残されている住宅があることでした。
ソファやテーブル、ベッドといった大型家具だけではありません。本、タオル、洗剤、食器、カップ、調理用品など、日常生活で使うものまで写真に写っています。

写真出典:REALTOR.ca(カナダ)|掲載物件を見る

写真出典:REALTOR.ca(カナダ)|掲載物件を見る
こうしたものは、一つひとつを中古品として売ろうとしても、それほど高い金額にはならないでしょう。
引っ越し先まで運ぶとなれば、手間も費用もかかります。
かといって、まだ使えるものをすべて捨ててしまうのも、もったいない。
「自分はもう使わない。でも、次にこの家に住む人なら使うかもしれない」
そんなものこそ、住宅と一緒に引き継ぐ意味があるのではないでしょうか。

写真出典:REALTOR.ca(カナダ)|掲載物件を見る

写真出典:REALTOR.ca(カナダ)|掲載物件を見る
食器や調理用品、洗濯用品などがあることで、新しい居住者は入居したその日から生活を始めやすくなります。
特に、一時的な住まいを必要としている人や、最低限の荷物だけで転居したい人にとっては、家具だけでなく生活用品まであることがメリットになる可能性があります。
アメリカ|家の中だけでなく、暮らしに使っていたものまで
アメリカでも、家具や家財を含めて売却される住宅があります。
そこで残されているものを見ると、「住宅に何を残すか」という範囲は思った以上に広いことに気づきます。

写真出典:Zillow(アメリカ)|掲載物件を見る
家具・家電だけではなく、その地域での暮らしに使われていたものまで引き継ぐ。
これはHome Relayを考えるうえでも興味深い例です。
住宅に必要なものは、その土地や住む人によって違います。雪の多い地域、庭の広い住宅、車が必要な地域などでは、それぞれ必要になる道具も違うでしょう。
一方で、「残せば残すほどよい」というわけでもありません。
まだ使えるものと、処分したほうがよいものが混在する場合もあります。
だからこそHome Relayでは、残置物をそのまま次の人へ渡すのではなく、「何を残し、何を処分するか」を選ぶ作業が重要になると考えています。

写真出典:Zillow(アメリカ)|掲載物件を見る
イギリス|「何を引き継ぐか」を明確にする
イギリスでも、「Contents included in the sale(家財を売却に含む)」と記載された物件があります。
中には、家具だけでなく、カトラリー、食器、調理器具、キッチン用品などまで含むことが明記されている例もありました。

写真出典:Rightmove(イギリス)|掲載物件を見る
さらに興味深かったのが、売却に含まれるものについてinventory(一覧)を用意するという方法です。
これは日本でHome Relayの仕組みを考える際にも参考になりそうです。
たとえば、
- 住宅と一緒に引き継ぐもの
- 所有者が持ち出すもの
- 希望者がいれば引き継げるもの
- 処分するもの
といった形で整理しておけば、「どこまでが住宅と一緒に付いてくるのか」が明確になります。

写真出典:Rightmove(イギリス)|掲載物件を見る
もちろん、残っていれば何でもよいわけではない
海外の事例を見ると、まだ使えそうなものと、次の人には不要と思われるものが混在している住宅もあります。
しかし、前の所有者や第三者が、すべてをきれいに選別してから引き渡す必要はないのかもしれません。
何が残されているかを事前に写真などで伝え、その状態を含めて住宅を引き継ぐ。次の居住者は、使いたいものはそのまま使い、不要なものは自分で処分する。
そうした選択肢があれば、まだ使えるものまで一律に処分する必要がなくなり、片付けや廃棄にかかる費用も抑えられる可能性があります。
もちろん、危険物や衛生上問題のあるものなど、事前に処分すべきものはあるでしょう。
大切なのは、「すべて空にしてから引き渡す」ことを前提にするのではなく、残されたものも含めて引き継ぐという選択肢を用意することだと考えています。

写真出典:Zillow(アメリカ)|掲載物件を見る
「おしゃれな家具付き住宅」を広めたいわけではありません
海外の家具付き住宅を調べると、ホテルや民泊施設のように美しくコーディネートされた住宅もたくさん見つかります。
しかし、ホームリレープロジェクトが広めたいのは、そうした住宅ではありません。
すでにそこにある、まだ使えるものを捨てずに次の人へつなぐこと。
少し古い家具でも構いません。
すべてがおそろいである必要もありません。
前の人には必要なくなったものでも、次の人にはちょうどよいかもしれません。
その価値を、処分する前に一度考えてみたいのです。
日本にも「引き継げる暮らし」が眠っているのでは
日本でも、高齢者が施設へ入居したとき、住宅を相続したとき、転居や住み替えをしたときなど、住宅の中に多くの家具や生活用品が残ることがあります。
そして住宅を売却・賃貸するため、それらを処分して空の状態にすることがあります。
一方で、家財を整理できないことが、空き家を動かせない理由の一つになっているケースもあるでしょう。
もし、まだ使えるものを適切に選び、希望する次の居住者へ住宅と一緒に引き継げたらどうでしょう。
不動産会社だけでなく、必要に応じて片付けや遺品整理などに携わる事業者とも連携し、
残すもの・持ち出すもの・処分するもの
を整理する。
そして、何が残っている住宅なのかを次の人へきちんと伝える。
そんな仕組みができれば、家財が残っていることが「住宅を売れない・貸せない理由」ではなく、場合によっては次の人にとっての価値になるかもしれません。
Home Relay Projectが目指していること
Home Relay Projectでは、前の居住者が使っていた家具や生活用品を、住宅とともに必要とする次の方へ引き継ぐ仕組みをつくれないかと考えています。
イメージしているのは、
前の居住者・所有者
↓
残すもの・持ち出すもの・処分するものを整理
↓
住宅を売却・賃貸
↓
家具・生活用品を引き継げる住宅として紹介
↓
必要とする次の居住者へ
という流れです。
海外と日本では、不動産取引の慣習も住宅事情も異なります。
今回紹介した海外の方法を、そのまま日本へ持ち込めばよいとは考えていません。
だからこそ現在、Home Relay Projectでは、不動産会社をはじめ住宅に関わる皆様からご意見を伺いながら、日本でどのような形なら実現できるのかを探っています。
まだ使えるものをすべて捨てるのではなく、住宅とともに次の人へ。
「家」だけではなく、そこで使われてきた「暮らし」もリレーできる仕組みを目指しています。
※本記事で紹介している写真は、海外の不動産情報サイトに掲載された物件事例を参考資料として紹介しています。海外の「家具・家財付き住宅」とHome Relay Projectが同一の仕組みという意味ではありません。


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